電車にのると、目にすることがかなり当たり前になってきたトレインチャンネル。そこでは、テレビCM用のコンテンツが流されることも多い。ところが、テレビで観る場合と、トレインチャンネルではほんの少し趣が変わるのだ。
テレビCMはとにかくいろんなルールが多く、まるで広告映像界のF1的存在。そのお約束のひとつに、前ステ(ファーストカット)、後ステ(ラストカット)というものがある。本編が15秒だとすると、そのファーストカットとファイナルカットをそれぞれ伸ばすか静止画にして3秒・無音のいわば「遊び」を入れることになっている。
テレビで放映される場合、まずこの部分が流されることはないので観ることもないけれど、トレインチャンネルでは、仕様なのかこの「ステ」、ほんの少しはみだす……観ることができる。
特に後ステの、一連のパフォーマンスが終わって袖に引っ込みたいにもかかわらず、しばし舞台上で待たされる演者のような、話題がない相手とがんばって継投していた会話が途切れた時のような、ひとしきりの別れのやりとりのあとバスか電車に乗り込んではみたものの、中々発車してくれなくて困った時のような、バツの悪さをおもいださせてくれる。
ほんの少し垣間見えたところに、出演者の半呼吸があったり、アクションの続きがあったりすることで、全体の印象もほんの少し変わる。バタフライエフェクトならぬ、アトステエフェクト。一度……
ここまで書いておいて、さてアトステエフェクトでも見てやろうとトレインチャンネルを見上げて、ある事実に気づいてしまった。「ばつの悪さ」がなくなっているのだ。おそらくはソフトウエアのアップデートなどにともなって、改善してしまったのだろう。こうして進歩の名の下に、文化的なユルさや遊びは淘汰されていくのだ、などという口上はただの負け惜しみ。どこかで出くわすことを願いつつ、そんなことはもうないんだろうなと思いつつ、コンテンツの繋がりがスムーズに進んでいくトレインチャンネルを眺めていて、各停に乗らねばだったのに、急行に乗ってしまったことに気づいてしまった。それはともかく、もし今後、アトステエフェクトを目撃することがあるならば、ぜひそのバツの悪さを味わってほしい。それはおそらくレアな体験だ。